アーキテクチャ、設計、脅威モデリングのテスト (Testing Architecture, Design, and Threat Modeling)
説明
スマートコントラクトにおける欠陥のあるアーキテクチャ、設計、不適切な脅威モデリングは、分散型アプリケーション (dApp) のセキュリティ、機能性、ユーザビリティを損なう脆弱性につながる可能性があります。これらの問題は設計フェーズで潜在的な攻撃ベクトル、エッジケース、依存関係の考慮不足が原因で発生することがよくあります。
設計や脅威モデリングが不十分だと、以下のような問題を引き起こす可能性があります。
機密データの安全でない保管
重要な機能の欠陥があるロジックや最適化されていないロジック
再入攻撃やフラッシュローン攻撃などの、一般的な攻撃ベクトルに対する緩和策の欠如
ガバナンスやアップグレードのための不十分なメカニズム
外部システムやオラクルへの依存関係の見落とし
例: 設計が不十分な関数ロジック
function withdraw(uint256 amount) public {
// Does not check for balance before withdrawal
(bool success, ) = msg.sender.call{value: amount}("");
require(success, "Withdrawal failed");
}
影響
コントラクトが悪用されやすくなり、資金の窃取や損失、データ破損、サービス拒否につながる可能性があります。
設計上のセキュリティ欠陥は相互接続されたシステムや分散型アプリケーションに連鎖的な障害を引き起こす可能性があります。
悪用されるとユーザーの信頼とプロジェクトの評判を損なうことがよくあります。
対策
設計フェーズで包括的な脅威モデル分析を実施し、潜在的なリスクと攻撃ベクトルを特定します。
セキュアコーディングと、最小権限、職務分離、フェイルセーフデフォルトなどの設計の原則に従います。
開発時およびデプロイメント前の両方で、定期的にセキュリティ監査を実施します。
形式検証ツールを使用して、スマートコントラクトの重要なプロパティを検証します。
再入保護、サーキットブレーカー、安全な外部コール処理などのメカニズムを含む多層防御戦略を採用します。
モジュール性とアップグレード可能性のテスト (Testing Modularity and Upgradability)
説明
モジュール性とアップグレード可能性は、スマートコントラクトの長期的なセキュリティと保守性にとって不可欠な原則です。モジュール性が不十分だと、重要なロジックとストレージが一体化したモノリシックな設計になりがちで、システムのアップグレード、監査、拡張が困難になります。制御されたアップグレードメカニズムがなければ、攻撃者はアップグレードプロセスの弱点を悪用し、不正なコントラクトの変更やセキュリティ欠陥の導入につながる可能性があります。このような脆弱性を回避するには、モジュールが明確に分離され、適切に構造化されたコントラクトと、安全なアップグレードプロセスを確保することが不可欠です。
テスト 1: ロジックと状態の適切な分離を確認する
脆弱なコード:
contract Monolithic {
uint256 public data;
address public admin;
function updateData(uint256 _data) public {
require(msg.sender == admin, "Unauthorized");
data = _data;
}
function upgrade(address newAdmin) public {
require(msg.sender == admin, "Unauthorized");
admin = newAdmin;
}
}
なぜ脆弱なのか
モノリシック設計ではロジックと状態を単一のコントラクトに一体化するため、アップグレートにリスクが伴います。
ストレージやロジックを変更すると、既存のデータを不注意で破損する可能性があります。
分離の欠如のため、ロジック内のバグや脆弱性の切り分けが困難になります。
修正されたコード:
contract Logic {
address public admin;
Storage public storageContract;
constructor(address _storageContract) {
admin = msg.sender;
storageContract = Storage(_storageContract);
}
function updateData(uint256 _data) public {
require(msg.sender == admin, "Unauthorized");
storageContract.setData(_data);
}
}
contract Storage {
uint256 public data;
function setData(uint256 _data) public {
data = _data;
}
}
チェック方法
コードレビュー: ロジックとストレージが別々のコントラクトに分離していることを検証します。
ストレージ解析: コントラクトロジックをアップグレードしてもストレージレイアウトが維持されること、およびデータ破損が発生しないことを確認します。
テスト 2: 安全で制御されたアップデートメカニズムを検証する
脆弱なコード:
contract Proxy {
address public implementation;
function upgrade(address newImplementation) public {
implementation = newImplementation;
}
}
なぜ脆弱なのか
アップグレード関数はアクセス制御で保護されていないため、どんなユーザーでも実装コントラクトを置き換えることができます。これは悪意のある行為者がコントラクト機能を乗っ取る可能性を高めます。
修正されたコード:
contract SecureProxy {
address public implementation;
address public admin;
modifier onlyAdmin() {
require(msg.sender == admin, "Unauthorized");
_;
}
function upgrade(address newImplementation) public onlyAdmin {
implementation = newImplementation;
}
}
チェック方法
コードレビュー: アップグレード関数がアクセス制御メカニズムで保護されていることを確認します (例: 管理者のみがアップグレードできます)。
動的テスト: 不正なアップグレードの実行を試行し、アクセス制御が意図したとおりに機能することを検証します。
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